シャルルドゴール空港に着いたのは、夜の11時だった。
日本と違い、日の入りが遅いパリでも、
この時間になるとさすがに暗くなっている。
機内で知り合ったイタリア人と奇遇にもホテルが一緒だったこともあり、
一緒に遅い夕食をとるためパリの町へ出た。
「うまい店を知っている。」
そのイタリア人は、自信ありげに話してきた。
僕といえば、パリに予備知識があるわけでもなく、
「ほう、そいつは楽しみだ」なんて言いながらも
68パーセントの不安要素を持ってついていった。
ホテルから歩いて5分くらいだっただろうか。
「ここだ。」
と言われて看板を見ると「Pasta」と書いてある。
パリに来てパスタかよー。
って内心思った。
だが一人だとホテルのレストランで食べるのが関の山だったろう。
それに相手はうまいとおもって連れてきてくれている。
文化の違いはあれど、同じ人間だ。
食えないぐらいまずいということはなさそうだった。
テーブルにつくとウエイターがメニューを持ってきた。
メニューはフランス語で書かれていたのか、
イタリア語で書かれていたのか忘れてしまった。
だが一つだけ確実に理解できた言葉があった。
僕は、トマトパスタを注文したのだ。
フランス語でトマトは「tomate」、イタリア語では「pomodoro」だ。
今、頭の中にその時開いたメニューがある。
曖昧な記憶をたどるしかないが、
確か「pomodoro」と書いてあったような気がする。
まさにフランスに来てイタリアだ。
パスタがくるまで、ピクルスと
チョーでかいポッキーみたいなのをつまんでいると
白ワインが出てきた。
イタリア人が頼んだらしい。
やっとフランスらしくなった。
「うまいよこの白ワインも、トウキョーで飲むとイチマンエン超えるかな。」
だって。
「東京」という言葉が、ずっと後ろに聞こえたとき、
そっかーパリにいるんだって初めて実感できた。
実感して飲めたその時の白ワインは、今までで一番うまいワインだった。
登場人物
イタリア人
特徴
日本人を奥さんにもつ、
フィレンツェ出身バリバリ日本語を話せるお方。