F子は「じゃん!」に反応する。
居酒屋で飲んでいたときだ。
私が「やっぱり、そうじゃん」
なんていうと同時に
「じゃん!」って言ってくる。
「こっちにそんな話し方する人いないよ」
諦観の眼差しでF子は答えた。
ちなみにF子はヤイコが好きだ。
普段意識しないが、私の話し方はかなり変らしい。
ずっと和歌山に居た人と比べるとやっぱり違う、かな。
青春時代、高校から数えて8年間を地元以外で過ごしたためだろう。
そういえば2006年3月11日に結婚式を挙げる大学同期のY.Sは、
純粋の静岡人にもかかわらず
私と話すときに、意味不明の関西弁を使っていた。
なんでも関西弁に憧れていたらしい。
これがいかにも不自然だった。
そう思うとF子が
「じゃん!」を気にするのも納得できる。
F子は大好きな
「プリプリえびのミルキーマヨネーズ」を口いっぱいにほおばっていた。
ほっぺたがチャーミングな事もあり、
冬眠前のリスのようにふくれている。
「おいしい」
これも大好きな
「栗アイス」を食べながら言った。
F子が私の前で「おいしい」
と言ったのはこの時で2回目である。
初めては、「松茸の土瓶蒸し」を食べているときだった。
ちなみに、この「栗アイス」は私も食べていた。
アイスの上に不思議な食感のするものがのってある。
アキ「これなんだろうね?」
F「う〜ん、なんだろ、聞いてみたら?」
アキ「ちょっと店員さーん。これ、この細いの、これなに?」
店員さん「これはね、内緒なんですけど…
本当のほんとうに内緒なんですけど…
そうめんをバーナーで炙ったものなんですよ。」
小さい頃、戸棚にあったそうめんを
ポリポリとかじったとき、ほのかに甘いかったのを思い出した。
アイスに乗っているのは、あの時の味そのままだ。
「よかったね。わかって」
溶けかけのアイスを必死にすくいながら、F子は言った。
その日は気分がよかった。
外食したときは、だいたい夕食とお酒がセットになる。
が、その日はビールを飲んだにもかかわらず、
まだ足下が若干ふらついている程度だった。
よく見るとF子もふらついている。
と思ったのは気のせいだった。
私がふらついていたため、F子もふらついているように見えたのだ。
「もう一件行くか?」
自信過剰なのは、酒を飲んでもかわらない。
私たちは、5件向こうの店に入った。
私は、ヘネシーを頼んだ。
F子はカクテルを頼んだ。
(どんなカクテルを頼んだかは忘れた)
飲みながらFを見ると、
向かって左下、栗色の髪の毛がきらきらと光っていた。
店の照明の光が、F子の髪を透過していたのだ。
地毛だというその髪は、
私の飲んでいるヘネシーと同じ色をしていた。
顔を真っ赤にしながら見とれていると
F子が「んっ?」という感じで見てきた。
F子はまだ酔ってない様子だった。
そうめんを炙るのは、結構有名らしいですね。
知らなかった…。