Tに電話をしたのは、
闘鶏神社に駐車場があるかどうかを聞くためだった。
「あるよ。駅から浜の方に降りてきて、
二宮ってお菓子屋の前を左に曲がるの。
それで突き当たりが闘鶏神社。
その横が駐車場よ。」
「どうしたの?今ちかくにいるの?写真撮りにいくの?」
一つの質問に対して三つの質問が帰ってくる。
Tのいい癖だ。
が、よく聞き取れない。
というのも、ここはしごく電波が悪い。
ちなみに「ここ」というのは梅畑のこと。
alwaysアンテナ2本、sometime圏外という感じだ。
重なって携帯本体も寿命が近い。
毎日充電しないと「ピーピーピーー!」と鳴り
黒い画面に切り替わる。
こうなるともうお手上げだ。
思いっきり振っても、梅の枝に引っかけても、塩漬けしても戻らない。
塩漬けすれば100%戻ることはないだろう。
塩ならいくらでもあるので、
塩漬けすると充電できる携帯電話を発明してもらいたいものである。
まあつまり、最悪の環境で電話をしていたのだ。
私はうまく聞き取れないでじれていると、
「なんだか宇宙と交信しているみたね。」
電話の向こうで
Tは「ふふふ」と笑いながら言った。
Tは時々私の想像を超えた事を言う。
この前もそうだった。
アキ 「今度海外に行くなら、一番何処に行きたい?」
T 「う〜んと〜、いっぱいあるけど、一番行きたいのは、
月、かな。」
アキ「月?つき?ツキ?月ね〜。なるほどねー、ふ〜ん、月かー。」
よくは覚えてない。
だがこのとき私は、
「ふ〜ん」と「なるほどー」を計3回ずつは言ったと思う。
質問の仕方が悪かったのかもしれない。
いや、これは私の知識不足で、
2006年現在「月」は、すでに「海外」という範囲の一部になっているのかもしれない。
あるいは、Tの出身校である。
オオチャカダイガク、ケイジャイガクブでは皆にそう教えるのかもしれない。
シラバスによれば、
「マーケティング、リサーチ特殊研究九十六」
という講義あたりで教わるのだろう。
Tはいろんな意味で面白い。
今、Tは闘鶏神社近くに住んでいる。
闘鶏神社とは、弁慶が熊野別当湛増と
鶏でやりやった所からきている。