平安・鎌倉の熊野詣では、王子の前を流れる岩田川(富田川)の瀬を何度も渡り滝尻まで行きます。
最初にわたるのがここ、一之瀬王子で、藤原宗忠は十九回も渡ったとあります。上皇や女院も徒歩で渡り、川の水で身を清めました。
「女院が渡るときは、白い布を二反結び合わせて、女院が結び目を持ち、布の左右を殿上人が引いた」 と、応永三十四年(1427)に参詣した僧実意は日記に書いています。
その後、この王子は荒廃し、江戸時代に再興されて、市ノ瀬王子社、別名、清水王子・伊野王子などと呼ばれていました。
明治時代に春日神社に合祀されましたが、昭和四十四年(1969)に現在のようになりました。
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